最初は小さな一歩だった。五坪足らずの空き地に建てたトタン屋根の小さな作業場。中古のプレス機一台からのスタートだった。1956年創業、プラスチックの金型から成形、組み立てを手がけるムトー精工(本社・岐阜県各務原市)は、日本経済とともに成長を続け、ものづくりのエキスパートとして長きにわたって社会の発展を支えてきた。

 技術革新や環境問題、人々の暮らしが大きく変わろうとする今も、プラスチックの役割は変わらない。時代にあわせてプラスチックで新しい社会を切り開くこと。それがムトー精工の使命だ。

 より強く、よりしなやかに、日々進化を続けるプラスチック。失敗を恐れることなく、挑み続けたい。その無限の可能性を世界に届ける架け橋に、ムトー精工はなりたい。

いつの時代も一貫してブレない信念。受け継がれる創業の信念

 自動車のナビゲーションやエアコン、各種スイッチなどの車載部品、家電製品や医療機器など、多岐にわたってプラスチック製品を手がけるムトー精工。創業者の故・武藤昭三(むとう しょうぞう)氏が起こした武藤合成樹脂工業所(現ムトー精工)は、現在国内7つの工場などに加え、ベトナムや中国、タイにも海外拠点を置き、国内外のものづくりの現場を支えている。

 会社の規模が大きくなり、時代や社会が移ろいでも、ムトー精工には創業当時からブレない思いがある。品質、スピード、そして高い技術力をもって、一貫した生産体制で製品を届けたい。すべては作る人、そして使う人の利益のために。昭三氏が築いた経営理念「顧客第一」が今も貫かれている。

 「一貫生産だからこそ、金型の設計製作から製品試作段階、量産生産立ち上げ時のトラブル対応、二次加工や塗装工程での課題など、あらゆる部分に目が行き届く。その結果、外注対応では難しいスピード感と高品質をムトー精工は可能としています」

 誇らしげにそう語るのは、管理部総務課のご担当者。日々人事や労務の面で働く人たちを支えている。

ムトー精工社屋

高みを目指すものづくりマインド。培われた確かな技術

 「簡単な物より、難しいものを。そうでなければ技術力は高まらない」。金型事業を手がけるにあたり、昭三氏は営業を担当する社員たちに向かってそう伝えたという。その言葉の背景には、高い技術力を付加価値として事業を発展させ、従業員たちの暮らしを少しでも豊かにしたいとの思いがあった。

 厳しい精度を求められる電子・電気製品のプラスチックパーツの生産に挑み、試行錯誤の中で腕を磨いた。その結果、世界中で大流行となった人気ゲーム機の製造につながった。確かな技術と信頼が認められ、国内外の企業から製造の依頼が届くようになった。

 簡単な物より、難しいものを。昭三氏の言葉は、今もムトー精工の中に脈々と受け継がれている。案内された先にあったのは最新の工作機械だった。

 「プラスチックの3Dプリンタはよく見かけますが、これは金属3Dプリンタです。従来の加工方法では実現できない複雑な金型構造を造形できる手法として期待されています」

 社会が求める効率化や環境負荷低減の観点からも、意欲的に新しい技術を取り込むことでこそ激変する今を乗り越えられる。

3Dプリンタ

すべては働く人と社会のために

 コロナ禍や半導体不足で落ち込んだ生産が、近年の自動車関連部品の受注増加により上昇に転じている。加えて社会変化によるEV(電気自動車)需要の伸びも目覚ましい。今後の高品質かつ迅速な製品供給を目指して、ムトー精工は拡大への舵を切る。各務原市の本社から約500メートルほど離れた工業団地で新工場の建設を進めており、最新設備を導入した新工場は2025年春の稼働を予定している。

 「新工場の建設もあり、社内は活気に満ちています」生産の主力を担う岐阜工場内を見渡すと、外国人社員や技能実習生たちの姿も目立つ。ムトー精工は、高い技術を国外の工場でも運用できるように外国籍の従業員に向けてていねいにその技術を伝えている。国内外を問わず、働く人の生活や家族、そして社会を守り、育みたい。昭三氏の思いは細部にまで宿っている。

 五坪の空き地で産声を上げた小さな町工場は今、さらなる高みを目指して成長を遂げようとしている。金型にあわせてその形を無限に変えるプラスチックのように、ムトー精工は時代や社会にあわせてものづくりをこれからも進化させていく。

教育実習生たち

山本労務管理事務所との関係は?

ともに歩む成長への道。その安心感が一歩を踏み出す勇気に変わる

 ムトー精工と山本労務管理事務所の出会いは2023年のこと。まだ日は浅いものの、お互いの信頼関係は深いという。

 「昨今の働き方改革や新工場建設計画など、さまざまな関連業務に追われ、助けを求めていました。そんな時地元の金融機関から山本さんを紹介いただき、相談をさせてもらったのがきっかけです。

 以前は私たち社員が、各種法律や取り決めを確認して書類を作成していました。迷った時は地元のハローワークや労働局の窓口で相談するような体制で…。書類作成に膨大な時間を割かれていました」

 山本労務管理事務所の伴走を得たことで、多くの面で作業の改善が図れたとのこと。人事制度や育休制度の整備、勤怠管理や各種社内申請手続きのDXやクラウド化などが現在進んでいる。

 ときに変化は不安をともなうもの。困った時にすぐに相談できるプロがすぐ近くにいる。その安心感が社内改革のスピードアップにつながっている。これからも進化を続けるムトー精工とともに、山本労務管理事務所は歩み続ける。

担当課長と担当社労士

取材:株式会社ココロバレ カメラマン:後藤尚代