飲食業や小売業、サービス業など、パートやアルバイトを多く抱える中小企業にとって、シフト制による勤務管理は日常的な業務の一つです。しかし、厚生労働省が令和4年に公表した「シフト制労働者の適切な雇用管理に関する留意事項」(令和8年6月改正)によれば、シフト制をめぐる労働トラブルは依然として多く発生しており、使用者側の対応が問われています。今回は、経営者・人事担当者が押さえておくべき重要ポイントをわかりやすく解説します。

■ シフト制でも「労働条件の明示」は必須です

「うちはシフト制だから、労働条件通知書には『シフトによる』と書けばいい」と思っていませんか?実はこれだけでは労働基準法第15条違反になる可能性があります。労働契約の締結時には、以下の事項を書面(または電子メール等)で明示しなければなりません。

  • 始業・終業の時刻(確定している日はその時刻を明記、または原則的な時刻+シフト表の交付)
  • 休日(曜日が確定していない場合でも、設定の基本的な考え方を明示)
  • 毎週少なくとも1回、または4週間で4日以上の休日確保(労働基準法第35条)

【注意】「シフトによる」の一言だけでは法的な明示義務を果たしたことになりません。具体的な時刻の記載か、シフト表の同時交付が必要です。

■ 就業規則にも「シフト制の基本ルール」を明記しましょう

常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則の作成・届出が義務付けられています。シフト制労働者についても、就業規則に「個別の労働契約による」「シフトによる」とだけ記載するのは不十分です。基本となる始業・終業時刻や休日を定めた上で、「具体的にはシフトによる」と補足する形が求められます。

■ シフトの作成・変更は「話し合い」が基本

使用者が一方的にシフトを決めることは望ましくありません。労働者の意見を事前に聴取し、確定したシフトを適切な期限内に通知するルールをあらかじめ設けておくことが重要です。また、一度確定したシフトの変更は「労働条件の変更」に該当するため、労働契約法第8条に基づき、使用者・労働者双方の合意が必要です。

  • シフト作成前に労働者の希望を聴取する手続きの明確化
  • 確定シフトの通知期限・方法のルール化
  • シフト変更を申し出る場合の期限・手続きの事前合意

【ポイント】これらのルールは就業規則に盛り込んでおくと、トラブル防止に大きく役立ちます。

■ まとめ:シフト制の適正管理が職場の安定につながる

シフト制は柔軟な労働力確保に有効な反面、ルールが曖昧なままでは労使トラブルの温床になりかねません。労働条件の明示・就業規則の整備・シフト変更ルールの合意という3つの柱を整えることが、従業員との信頼関係構築と安定した職場環境づくりの第一歩です。自社の雇用管理に不安を感じたら、ぜひ社会保険労務士にご相談ください。